ベレシカ

今年も1月中旬頃から、いよいよブルガリアでもインフルエンザが大流行する時期となった。毎年この時期になると各地で学校閉鎖が始まる。正確には грипна ваканция(グリップナ ヴァカンツィア)と呼ばれ、直訳すると「インフルエンザ休暇」という意味になる。
ソフィア以外の各地域で続々とインフルエンザ休暇による学校閉鎖が起こっているのに、首都ソフィア、人の多いソフィアでは不思議とここ数年コレが見られない。何故って??何故ならば、共働きが普通のブルガリアで(しかもソフィアは尚の事)、学校が1週間も休校になると、子供の面倒を見る人がいずに大変だということになるから。これはもう暗黙の了解で、「ソフィアでインフルエンザが流行してないってか?はは、んなわけないよな。」感が漂い、行政がわざとに数字を操作している、と疑わない人は少ないのではないだろうか。

ところでブルガリアでは、子供が病欠する時には主治医からの “べレシカ” という、病欠承認書のようなものが必要となる。診断書ではない。例えば、子供が何らかの体調不良で学校を休む場合、必ずしも医者の所へ子供が診察に行かなくても良いが(もちろん診察が必要な場合は行きますが)、学校を休むならばこの “べレシカ” を小児科の主治医にお願いしなければならない。お医者さんのべレシカか、親からの “家庭の都合ですいません休ませます願い” のどちらかが、学校を休む際には必要なのだ。

ブルガリアでは、赤ちゃんが誕生する際は誕生前に事前に小児科の主治医を決めておく必要があり、病院で産まれ、母子ともに家に帰ってきてから何週間かの間(どのくらいの期間か忘れてしまった)に、この主治医が家庭訪問をして、赤ちゃんの初検診をすることになっている。赤ちゃんの検診と共に、赤ちゃんを取り巻く環境などが適格かどうか、ここでチェックされるのだそうだ。

息子の主治医はおじいさん先生のDr. キリャコフという小児科の先生だった。見た目はちょっと怖そうだけど、それはそれは素晴らしい先生だった!息子の体調について助言を乞いたい時は、いついかなる時でも電話で対応してくれた。

まだ息子が幼稚園ぐらいだった時、夏休みで海に来ていた時のこと。腹部のひどい激痛で夜中にその地域の救急病院へ駆けつけたことがあった。「盲腸の可能性があるから、一応手術した方がいいかも」という、そこの医者の素人の目から見ても信頼しかねる判断に(血液検査もその他の十分な検査もなく、見た目の判断だけで手術されてたまるか!しかも、その、かもとは何じゃい、かもとは!)、私達は急遽とりあえず車を(文字通り)ふっとばしソフィアに帰ることに決めた。
帰る途中、早朝にも関わらずキリャコフ先生は電話で早速助言をしてくれた。「ああ、今その症状の腸炎が流行ってるから、家についたらコレコレとコレコレを飲ませてみなさい。食べ物は、コレコレとコレコレのようなもので」と。その後息子はすぐ回復に向かい、盲腸の手術をせずに済んで良かったと、今でも時折その時のことを思い出し、キリャコフ先生がいてくれてほんとに良かったよなと先生への感謝の思いにふけるのである。

残念ながら高齢のため 3年ほど前にいよいよ退職され、その後は彼の奥さんのこれまた高齢のお医者さんにバトンタッチとなった。奥さんもいい先生だったけど、Dr. キリャコフにはかなわなかった。過去形である理由は、奥さん先生も、やはり高齢のため、その後約1年半後に退職となったからである。
今では、その後継者である若い女医さんに引き継がれている。が、もはや、古き良き時代の “Old School” 的要素は、彼女には見られない。

さてこのべレシカ、以前は物理的な紙のメモみたいなものを主治医に書いてもらい、それを子供が担任の先生に手渡すシステムだったのが、去年辺りから近代的システムとなり、主治医から学校にオンラインで自動的に通知が行くようになった。
がしかし、保護者は依然として署名と手数料の6ㇾヴァを支払う必要があるため、主治医の元へ行かなければならない。

ここで、ガイジン母である私には、未だにほんの少し緊張し、身構えなくてはならないハードルが出現する。昨日もガイジン母の私はこのハードルに挑戦してきた。小心者なんだやい!

クリニックの主治医の先生の診断室の前には、こんなインフルエンザが流行っている期間は特に、大勢の保護者がべレシカを求めて待機している。

1)列をなしている訳ではなく、点在しているベンチに各々座っているため、誰がどのお医者待ち(4人の医者の診断室がぐるりと配置されている)なのか見分けがつかない。
2)息子の主治医を待っている人の中で、最後尾の人を見つけねばならない。
3)順番ぬかしに気を付けなければならない。
4)時折部屋から出てくる主治医や看護師さんに「わたし、ここにいまーす」のアイコンタクトを送らねばならない。が、ブル人あるあるで、なかなかアイコンタクトの熱視線を感じてもらえないことが多い。
5)通常、長丁場。

これらのハードルを乗り越え(低っ)、昨日も無事べレシカを依頼してくることができた。

もう少し天候が良くなれば、キリャコフ先生に今度こそ「コーヒーでもどうですか?」と家族でお誘いしよう!

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