天然ゲレンデ

学校が10日程休みになってもコロナの新規感染が一向に減らないもんで、どこかに遠出したくても出来ないインドア家族の唯一のアクティビティーと言えば、ソリ。この状態でもスキーリゾートやスパホテルへ息抜きに宿泊へ行く人々も多いけれど、怖がりだもんでブースター接種を受けた後でも引きこもりがちな私達なのである。なんせ、ブルガリアのワクチン接種率は、未だに人口の20%程度。毎日日本大使館から送られてくるコロナ関連情報のEメールで、【人口100万人あたりの累計死者数世界ワースト2位】の一文を目にするたびにひえ~と思うのだが、恐ろしいことにこの一文はもう長い期間(ここ数か月続行中)見慣れてしまっており、驚愕度が薄れてきている事実に驚愕する。

前政府は、感染率の上がり下がりによってその都度対策を練っていたように見えるが、新しい政府になってからは特にこれといった対策も見られず、ワクチン反対派もかなり多い。
とにかく、自分達の身は自分達で守らなくっちゃいけない。スパルタだもの。

先日、ソリを車に乗せて、私達はソフィア近郊のスキー場ヴォロヴェッツへ向かった。絶対人いっぱいいるよね、と言いつつ、今回は(スキーゲレンデではない)ヴィトシャ山の単なる傾斜ではなく、もうちょっとちゃんとしたゲレンデっぽい所で滑らせてあげたかったので、ヴォロヴェッツへ行くことにした。
すると途中で、ソリをするのに格好の天然ゲレンデを偶然発見。通り際に車窓から見た印象ではほとんど人はいなかった。ソリが出来そうかどうか一か八か、とにかくUターンしてそちらへ向かうことにした。

なんと!そこにはお子が2人とそのママ達が2人だけで、それはそれは悠々とソリを楽しんでおられるではないか!単なる丘の斜面であるこの天然ゲレンデは、びっくりするほどソリに持って来いの場所だというのが分かった。おおお、ラッキー!人いない!

到着直後 いえーい広いんだもんね~誰もいないんだもんね~

滑り放題転がり放題、中年女子オバはんの私も気兼ねなく遊べる。
喜んでいるのも束の間、どうやら私達と同じ思考回路でUターンをしてやってきたと思われる車が次々と止まりだした。1家族増え、2家族増え。。。
約30分後には、なんとあのガラガラだったゲレンデは、結構な人が集ってきていた!がががーんである。

約30分後 どこからともなくやってきた同類達

こうなっては自由に滑り放題というわけにもいかなくなり、中年女子オバはんも周りの目を気にするようになり、とにかくもう次々と車が止まりだしたため、これはいかんと私達は新たなる場所を求めて出発することに決めた。
一番最初に来ていた開拓者である2人のママとお子達は、人が多くなる前に出発したようで、その時にはもう姿を消していた。

これと似たような風景をかつて見たことがある。もう9年も前のことだけれど、毎年訪れる黒海はアフトポルという町のビーチでのことだった。

アフトポルのビーチで、私達は毎日ある決まった場所に陣を取っていた。そのエリアには比較的人が少なかったからだ。何故そのエリアを避ける人が多かったかと言うと、きれいな砂で遠浅のアフトポルのビーチの中で、この一帯だけは底が砂ではなく石だったから。泳ぐために幾分か石がない所まで歩いて行かなければならなかったからだ。

ある日、毎日ほぼ隣りかもしくは、ごく近くのビーチチェアに陣を取っていたある家族が、底の石を取り除き始めた。当時息子はまだ赤ちゃんだったので、ビーチでもあまりぼーっとすることも出来ず、その人達がしていることを気に掛ける余裕もなかった。何をしてるのかな、カニでも見つけてるのかな、ぐらいに思っていたところ、どうも石を取り除いているようだった。

翌日だか翌々日だったか、次の日によく見るとうっすらと底の砂地が見え始めている。細い細い道だが確実に砂地が見えていた。そしてそのショートカットを使う人がだんだんと増えてきたのだった。

今、あの細々とした砂地の道は沖へと向かう堂々とした大きな砂地の1本道となり、多くの人が当たり前のように使っている。この道があたかも元からそうだったと思っている人がほとんどかもしれないが、私達はその開拓者を知っている。この便利な石なきショートカットを使わせてもらう度に、あの家族のことをいつも思い出すのである。

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