尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

まだ若かりし30歳頃、突然首回りに赤い斑点のようなものが出来始めたのが、尋常性乾癬との出会いだった。尋常性乾癬というのは免疫疾患の一種で、普通の人が28~30日で迎える皮膚のターンオーバーを、3~4日で迎えることが原因で起こる皮膚の疾患である。はじめはあまり気にならなかったその赤い斑点は、そのうち皮膚が盛り上がったようになってきて、だんだん痒みが増してきた。やがてものすごい痒みと共に、首の赤みは更にひどくなり、真夏でもタートルネックの服が欠かせなくなってしまった。隠さずにいると、とんでもなく目立つぐらいの激しい赤色だった。

皮膚科に行って診察を受けると、お医者さんが「尋常性乾癬のおはなし」というパンフレットをくれて、どうも私はコレらしい。先生曰く、この皮膚の病気は悲しいかな未だに完治する決定的な薬というものはなく、対処法しかないとのこと。一生うまく付き合っていくしかないんだと説明を受けた。
尋常性乾癬に効く第一のものとして太陽の光があり、それ故に「紫外線療法」というものがある。私も定期的にこの紫外線療法を受けに、皮膚科に通った。確かに症状は抑えられたけれど、首の赤みが取れるとまではいかなかった。

しばらくして、ふともらったパンフレットを読み返してみると、そこに乾癬と扁桃腺との関係が書かれてあった。まれに扁桃腺が原因で乾癬が発症する、みたいな内容だったと記憶する。とにかくそこで「はっ」とひらめいたものがあった。私は子供の頃から扁桃腺が弱く、その当時もしばしば扁桃腺が腫れていたのだ。
その次の診察の時に先生にその話をすると、隣接する耳鼻咽喉科の先生にその場で紹介状を書いてくれ、その足で私は耳鼻咽喉科を訪れることになった。耳鼻咽喉科の先生は、私の扁桃腺の白血球の数値を測らねばならないと言い、なんと手袋をした手で扁桃腺をマッサージしなさったのだ。あの気が遠くなるようなおっそろしい体験は、今から思えば果たして本当にあった出来事なのかどうなのか?と思うくらい、それはそれはおっそろしい体験だったため、こうして思い出しながらも、「はて、もしやあれは気が遠くなって幻覚を見たのかいな」と疑ってしまいそうになるくらいなのである。が、しかし、あれは実際にあった出来事だったはず。おっそろしい出来事だった。

さて結果を見ると白血球の数値がやはり異常だったそうで、耳鼻咽喉科の先生と皮膚科の先生の間では、こりゃやっぱり扁桃腺が乾癬の災いになっとるな、との結論が出たのだった。こうして私は扁桃腺を摘出する手術を受けることになり、人生初の入院及び手術を経験することになった。

手術後は食事をすると喉が痛くて痛くて仕方なかったけれども、なんとビックリ!あの首の凄まじい赤みも痒みもすっかり綺麗になっていた。あんなに真っ赤だったのに!!もう痒くない!タートルを着なくても大丈夫!まるで奇跡のように、私の首回りは全く普通に戻ったのだった。

ところがそれから数年経って、再びぽつっと赤い皮膚の盛り上がりが出来始めた。嫌な予感は的中し、どうやらまた乾癬が騒ぎ出したようだった。結婚直前のことである。結婚式ではウェディングドレスを着ると、首の赤みが少し目立つのでファンデーションで隠したりしていた。
やはりこの病気とは一生付き合っていくしかないんだ、一旦良くなってもまた出てくるんだと、思い知らされてしまった。
ところが。
新婚旅行で行ったトルコの灼熱のお日様は、私の尋常性乾癬の症状を皆無にしてくれたのだった!そう。トルコから帰ると、首の赤い盛り上がった皮膚は全くなくなってしまっていたのダ!何というすごい太陽パワーなんだ!!

ありがたいことに、それから実に10年近く乾癬の症状は出ていなかった。それが、2年ほど前から再び症状が出始めたのだ。もしかするとコロナで外出する機会が減ったことやら(太陽にあたっていない時間が多かった)、生活環境が変わり少なからずストレスを感じていた事とも関連があるのかもしれない。いずれにしても厄介なことは、今回の乾癬は頭皮に出るようになったことだった。

シャンプーは刺激の少ないものに変え、皮膚科にも行き薬(ステロイド剤ではないもの)ももらった。がしかし、やっぱり痒い。ところでこの乾癬という病気は、日本ではあまり聞いたことがなかったし、周りに乾癬を持っている人はいなかった。それなのにブルガリアでは、結構よく聞くのである。何を隠そううちのダンナも、私ほどではないにしても、まれに足に乾癬の症状が出てくるのダ。というワケで、全くもって良き理解者である。それからよく知っている友達の息子さんもその一人。彼はかわいそうに一時期背中に大きく乾癬が広がり、紫外線療法を受けながら、乾癬の治療にと良いからとイスラエルの死海に行ったくらいだ。実際、死海の水は乾癬にはいいらしく、帰ってきてからはずいぶんマシになっていた。

きつい薬ではないからか、薬を使ってもなかなか痒みは収まらず、一体どうすればいいのかと思っていた矢先に、ダンナが一言「シャンプー一切やめてみたら」と言う。一瞬「えええ」とは思ったものの、何やら納得できるものがあり、早速シャンプーなしでお湯だけで洗髪をしてみた。慣れないものだし、爽快感はないものの、あの強烈な痒みがない!

それ以降恐ろしくてシャンプーは使えないまま、早くも4か月ぐらいが経った。痒みが激減したことの他に特筆すべき事実は、抜け毛が激減したこと。私は髪の量が多く、多少抜けてもあまり気にはしていなかったが、それでも出産してからこの方、毎回髪を洗うたびに大きな ”まっくろくろすけ” が誕生するのは何でだろうといつも思っていたのだった。それが、シャンプーを使わなくなって以来、シャンプーをした際に抜ける毛がかなり少なくなったのダ。もう ”まっくろくろすけ” にはなれないほどの少量なのである。
シャンプーを使わないからと言って髪がべた付くこともなく、においが気になるわけでもない。(まあソフィアの空気は乾燥しているからかもしれないけれど)とにかくあの痒みが減って、薬もつけずに過ごせるようになったのは、一つは無シャンプーのおかげかもしれない。

それにしてもコロナが落ち着いたら、またあのトルコの灼熱のお日様にあたりに行こう!ブルガリアの太陽では弱すぎるのかもしれぬ!とまことしやかにトルコの太陽が乾癬をやっつけてくれるはず、と言わんばかりの私たちなのである。

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