一過性全健忘というもの

一過性全健忘というものの存在を初めて知った。

いつもはオンラインで仕事をしているのが、どうしてもこの時は職場へ行かなければならない用事があり、数日前久方ぶりに職場へ来ていた。その矢先に、従兄からラインでメッセージが入った。なんと実家の母の記憶が飛んでいて今検査入院をしているというのだ。

私はその前日に母と顔を見ながら1時間半ほど話をしたところであり、その時には全く異常など見られず、全くもっていつもと同じ母だった。ゆえに、ちょくちょく記憶が飛んでいるなどというのは寝耳に水で、にわかには信じられないことだった。
仕事の合間を見て、付き添ってくれているという叔父や叔母、そして従兄妹にも電話してみる。情報が錯綜するが、母が2~3分毎に同じ質問を繰り返し、この日の朝から現在までの記憶が全くないらしいという、恐ろしい情報が入ってきた。どうやって今現在病院にいるのか、何故病院にいるのか、全く分かっていないらしい。私は、即座に何とか日本へ帰るルートを見つけなければ、ということを考え始め、そうしているうちに付き添いで病院まで行ってくれた叔父に、やっとラインで話を聞くことが出来た。

私はもう胸がどきどきしてしまって、恐る恐る叔父と話をし始めたのだが、叔父は意外と明るい声でこう言うのだ。「先生曰く、一時的な物忘れらしいわ!一応全部色々検査はしてるけど、一晩寝て明日になったら、元に戻ってるらしい!MRIも撮ったけど綺麗なもんや~。脳波も大丈夫やし、心配ないわ! ”一時的な物忘れ”って検索して、ネットで調べてみぃ、出てくると思うで」
・・・?・・・
2~3分前のことが分からなくなっているという深刻な状況で、一時的な物忘れってそんなことがあり得るのだろうか。半信半疑で調べてみると、なんと確かにそういうものがあるのだ。

一過性全健忘(いっかせいぜんけんぼう)
外傷など明らかな誘因はなく、突然新たな記憶が全くできなくなる病態のこと。
●自分の置かれている状況が分からなくなり、同じ質問を何度も繰り返す。
●自分や家族の名前、それまでの出来事の記憶は発作中も保持される。車の運転等も可能。
●通常24時間を過ぎると元に戻っていく。
●50歳以降で起こる割合が高い。
●通常は1回きりの発症で、再発はほとんどない。(再発率5~20%)

未だに原因は不明であるが、ストレスや不安などの情動や、体性感覚刺激、自律神経系との関連も可能性としてはあるらしい。
●発作中の記憶は、それ以降も戻ることはない。

その後、病室にいる母と話が出来た。
私と話している間にも、やはり同じ質問を何度も繰り返していた。叔父からの情報が先に入っていなければ、私も相当動揺したに違いない。

8年前に父が他界し、私には兄妹もいないため母はずっと一人暮らしをしている。
この度こんな急な事態で、周りの親戚がみんな迅速な連携をとってくれて無事に母は入退院できた。親戚のありがたい迅速連携プレーに改めて感謝の気持ちでいっぱいである。

さて叔母と一緒に家に帰ってきた母とさっそくラインでビデオ通話をしたら、全くいつもと変わりない母だった。全てを笑いに変えるひょうきんな母を見て、やっと少しホッとできた感じである。「いやーほんまに全く覚えてへんねん。たぬきに化かされたか、キツネにつままれたか、不思議でしゃーないわ!」
1年に一度は必ず家族みんなで帰国して、帰国した折には1年間の楽しみをいっぱい詰め込んで母と一緒に過ごすのだが、今年はコロナの影響で8月からの帰国予定が延期になってしまった。飛行機がキャンセルになってしまったのだ。物理的に会えるのはまだいつになるか具体的には分からないけれど、心は今までの何倍も何倍も寄り添っていこうと思う!
いやはや本当にびっくりしました。



一過性全健忘というもの」に2件のコメントがあります

    1. ありがとうございます‼️ 本当にびっくりしました。以来、さらに頻繁に電話する様にしていますが、やっぱり早く会いに行きたいですわー(°▽°)

      いいね: 1人

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